蟲師 続章 # 13

夕暮れ時、ふと 何処かへ帰りたくなる。 自分の故郷はここのはずなのに。 日が暮れかかる頃、何かに呼ばれるように足が向いて行く。 本当に生まれた所はここなのか。 どこか違う所じゃないのか・・・と。




この蟲師の スタッフ は、原作を大切にしてるという事は ファン なら知ってる。

ただ、マンガ と アニメ では媒体が違うので全く同じでは伝わらない所も出る。 しかも アニメ は映像。 動いて色がつく。 加えて音楽 ・ 声もつく。 その複雑になる媒体で原作を壊さず、いかに魅力を最大限に引き出すか。 原作に愛着や思い入れが無ければ、出来ない作業だと思う。

この回、その魅力と言うか 『 味 』 を最大限に出したのが 「色」 。

「残り紅」 は、夕焼けが キー になる話だ。 夕暮れ時に人が入れ替わる という話なので、この 「キー」 をどう生かすか。 原作の カラーページ に夕暮れの シーン があるが、これをどう 「生かして行くか」 、打合せの時にこの点が出たのだろう。


人の入れ替わる現象の起きる 「大禍時」 。 この異質な雰囲気を出すには 「色」 しかないと思ったのだろう。
実はこの 「大禍時」 と普通の夕暮れで、背景の色を変えている。

一番わかりやすいのは、冒頭の シーン。 タイトル の出る シーン です。 「残り紅」 と出た後で背景がゆっくり入れ替わる。 この時、よく見てほしい。 最初は ピンク の強い感じの夕焼けが、オレンジ の入る色の夕焼けになる。

これは単に、回想から現在に変わる演出ではない。 後半の爺さんが茜ちゃんの影を見つける シーン を見て欲しい。 背景の夕焼けがやはり、同じ ピンク 系の色になっている。

つまり、この ピンク 系の夕焼けが 「大禍時」 という事。

原作未読者の方、ゴメンナサイ。 少し原作の話します。 最初に読んだとき、この夕焼けの色に 「不自然な色を使うなぁ」 と感じたんです。 太陽の光って、沈むときに波長が長くなるから黄 → オレンジ → 赤 → 紫に変化します。 ピンク は赤に白が入るので、夕暮れで ピンク に見えるのは太陽が沈んだ後の雲くらいです。 だから、空も地面も ピンク が入る原作には不自然さを感じてました。

だけど原作者がこれを わざと やってるのかな。 この時すでに、大禍時の設定としてこの色にしてるのかな。
ちょっと聞いてみたいですね。

オレンジ 系の自然な夕焼けと、異質な色の大禍時。 この現象の怖さを出す演出に 「色」 を使う。 スタッフ はよく考えてくれてるなぁ・・と感じました。



こんな感じで原作の魅力を出そうと奮闘する スタッフ ですが、作画の方でも奮闘を見せます。

茜と入れ替わりに村に現れた御影。 どこから来たかと問われて首を横に振る カット。

リピート はありません。 リピート とは、同じ動画を何度か使用して反復する動画を作ることを指す用語です。 人が歩いたり走ったりする動画によく使われます。 この カットはその リピート を使わず、最初から最後まで動きを描く動画にしてあります。
実はこの カット、首を振りながら頭が下がる動画なんですね。 横に振るだけじゃないいんです。 振りつつ顔が下がる動きです。 動きの軌道が変わるわけですから、リピート は使えない。 全部描く。 ちなみに動画枚数は 40 枚。 よくやる・・・( 汗

御影が陽吉につっかかる シーン。 子供の ケンカ が上手い。 この カット の芝居を作る時の打合せで、どう行くかを検討したんだろうなぁ。 子供の仕草を研究とか観察してないと、「平手で叩く」 という演技は思いつかないと思う。 子供のいる スタッフ にでも聞いたのかな。 子供の動きと言えば、御影が大禍時の影に踏まれる前の、海辺での影ふみ遊びの カット。 短いし、カメラ が パンダウン ( 上から下へ、カメラ が下がる カメラワーク ) で少ししか出ないけど、子供の一人ひとりの動きが完璧。 影を踏もうとする仕草、避ける仕草が実に子供っぽい。 すごいな作画担当。

作画は難しいことではないが、枚数を使うことによって情感を出す演出が光る シーン。

記憶が戻り、一人で山の中に入る御影。 それを迎えに来る陽吉。 帰ろうと手を差出し、御影の手を取る カット。 そして、その後の御影の手を引く カット。

非常にゆっくりで、作画的に凄そうに見えますが ( 実際、凄いんですが ) 、原画さんが神経使って作画してくれてますので、動画は形の ブレ だけ気をつけるくらいです。 手を引く カット も、途中で手のひねりが入りますが、動画を作りやすくするための注意書きが入ってる ( はず ) ので、ブレ ずに キレイ に動いてます。
ちなみに、手を取る カット は 4 9 枚。 手を引く カット は 6 5 枚です。 よくやる ・・・( 汗 2

この シーン、二人の絆がより深くなる場面なので、ゆっくりの動きにしたんだろうね。 こうしてゆっくり動かすと、動きに感情が乗ります。 これを狙う演出です。 実に嵌ったという感じです。

背景 スタッフ も凄いよな。 ビックリ したのが茅葺屋根の縁。 下から見上げた感じの縁の感じが完璧。 自分も何度か茅葺屋根の家を スケッチ した事あるけど、一番難しいのはこの アングル からの縁。 どうやっても らしく ならないんだよなぁ。 教えてほしいわ ( 笑


スタッフ は本当にこの原作を大切にしているんだなぁ。 改めて実感する。

来週も楽しみです。




最後に、12 話の レビュー は都合により パス します。 すみません。








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この記事へのコメント

しの
2015年11月01日 21:40
最近になって友人から漫画を借り、一期のBD購入までたどり着いてしまった新参です。
アニメーターではありませんが、コマの取り方すごいなあ、と思いながら見惚れておりまして、そのままこちらのブログにたどり着き、つい続章も買ってしまいました(笑)

こんな、生き生きと技術について書かれたら、もう買わずにはいられませんって!(・∀・)
友人にも漫画とブログを同時に見せ、BD購入仲間が増えました(笑)

沖つ宮、やまねむるなどは、本当にスピード感が素晴らしくて何度も何度も見直してます。
ギンコが落ちた直後の手を伸ばすシーン。他のアニメなら、そこで長々と時間を取るのに、蟲師では一瞬で終わり、思わず見る側が身を乗り出してしまう、ような。

蟲師を一通り見て、アニメで良くある「喋ってる暇あったら動けよ」と思うシーンがない事に最近気付きました。
台詞じゃなくて画で魅せる。静寂で魅せる。
かと思えば、台詞のみで魅せる。

凄い作品に出会えたなあ、と思うと同時に、BD購入の一押しをくれたこのブログに感謝です(礼
2015年11月02日 21:15
しのさん、初めまして。コメント ありがとうございます。

蟲師は原作も秀逸ですが、それを アニメ が超えてしまった貴重な一作だと思います。原作の持ち味を殺すことなく、空気感までも表現してしまった奇跡の アニメ じゃないかと思うのです。原作を愛した スタッフ が作った渾身の作品なので、ヘッポコ だけど技術の レビュー をしてどれだけ愛情込めて作っているかを伝えたかったんです。
最近、B S のほうで再放送されてるみたいで、この ブログ を覗きに来る方が多いですね。この記事が少しでも参考になったなら良かったです。
普通なら スルー してしまう細かい仕草まで、探求して作画に起こす情熱は好きだからこそです。スタッフ の息遣いの分かる数少ない例だと思うので、レビュー を参考にして見ていただけると有難いです。

>凄い作品に出会えたなあ

蟲師は スタッフ の情熱が生んだ奇跡の アニメ だと思います。こういう作品に出合えたのは本当に幸せですね。

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